真空の状態は圧力で表わします。
圧力の単位はパスカル(Pa)です。1Pa とは、1平方メートル (m2) の面積あたりに1ニュートン (N) の力が作用したときの圧力となります。
真空状態は圧力領域によって5段階に分類されています。
※通常の大気圧は105Paです。
低真空=105~102Pa(富士山山頂)
中真空=102~10-1Pa(スパッタリング装置内)
高真空=10-1~10-5Pa(真空蒸着装置内)
超高真空=10-5~10-8Pa(静止衛星軌道)
極高真空=10-8Pa以下(星間空間)
真空とは? What Is Vacuum?
真空とは、日本工業規格JISでは「通常の大気圧より低い圧力の気体で満たされている特定の空間の状態」と定義されています。
これは、ある容器を何らかの方法で空気を除去した、空気が希薄な状態を意味しています。
例えば、お味噌汁のお椀の蓋が開かない状態のように、大気圧よりもお椀の中の気圧が下がり、それにより蓋の外側から圧力がかかることで、蓋が開かなくなることは真空状態とみなします。
この真空の特性は様々な産業分野で活用されています。
真空状態とは? What Is Vacuum State?
なぜ真空が必要なのか? Why Is A Vacuum Necessary?
4つの真空の特徴
-
酸化しない
真空中は空気が希薄(酸素が少ない)なので、物が酸化しにくくなります。
-
障害物が
少ない真空中は気体分子が少ないので、物質同士の衝突リスクが少なくなります。
-
放電が
起きやすい真空中は電子が流れやすくなるので、電離に適した圧力にすることで放電によりプラズマを生成・制御しやすくなります。
-
沸点が
低くなる真空中では、物質の沸点が低下します。
真空の利用分野 Fields Of Vacuum Use
真空は身近にあるさまざまな場所で利用されています。
また、電子部品などの製造過程における薄膜形成などにも利用されています。
真空装置とは? What Is A Vacuum Equipment?
真空状態を人工的に作り出し、真空の特性を利用して加工や分析を行う装置のことです。
真空装置は以下の4つを主たるコンポーネントとして構成されています。
真空チャンバー
真空状態を維持するための耐圧容器
真空ポンプ
真空チャンバー内を減圧して真空にするためのコンポーネント
真空バルブ
真空ポンプと真空チャンバーの異なる圧力を遮断したりコントロールする役割を持つコンポーネント
真空計
圧力を測定する役割を持つコンポーネント
薄膜形成方法 Thin Film Formation Method
プラズマとは
ドライ成膜にはプラズマが利用されます。
プラズマとは、電離した気体のことを示します。固体、液体、気体とは異なる、物質の第4状態とも言われています。
真空にすることで、低いエネルギー(低温)でプラズマを生成できます。
身近なプラズマ
蛍光灯
水銀がプラズマ化した時に出す紫外線を利用して発光します。
ロウソクの炎
ロウの酸化で高温になります。
この高温になったロウが電離しプラズマ化します。
太陽
太陽は宇宙上で圧力というエネルギーが加わって、水素、酸素が電離して核融合反応し、エネルギーを放出しています。
彗星の尾
太陽風で発光しており、空気中の水や一酸化炭素が反応しプラズマとなっています。
プラズマテレビ
ガラスに封入されたネオンなどのガスが放電で発光します。
ネオンサイン
ネオン管にガスを封入し、イオン化すると発光します。アルゴンや水銀などの添加物を用いて様々な色に発光させます。
稲妻
電気が流れた空気が電離し、静電気の電気エネルギーでプラズマが発生するため発光しています。
オーロラ
太陽風で発光しており、空気中の酸素や窒素が反応しプラズマになっています。
蒸着とは
金属などの成膜材料を加熱し蒸発した粒子を基板(対象物)に堆積させ薄膜を形成する技術です。
真空中では、沸点が低いのでより低い温度で成膜材料を蒸発させることができます。
真空中は気体分子が少ないので、基板へ到達するまでの間に、気体分子に衝突するリスクが小さくなり、不要なガスを含まない純度の高い蒸発粒子を基板へ堆積させることができます。
スパッタリングとは
Ar等の不活性ガスを導入し、ターゲットと呼ばれる成膜素材(例:Ag)に高電圧を印加し、放電することで気体を電離させ、プラズマを生成します。
イオン化されたガス(例:Ar+)が負に印加したターゲットに衝突し、たたき出された粒子が基板(対象物)に堆積することで薄膜を形成する技術です。
CVDとは
CVD (Chemical Vapor Deposition)とは、導入した原料ガスを熱またはプラズマなどのエネルギーを利用して化学反応を起こさせ基板表面に金属薄膜あるいは化合物薄膜を形成する技術です。
CVDプロセス
ALDとは
ALD (Atomic Layer Deposition)とは、原子の性質である自己制御(Self-limiting)性を利用し、一層ずつ原子を堆積する薄膜形成技術です。
ALDプロセス
CVDが、投入した材料がそのまま連続して堆積されていくのに対し、
ALDは、一層ずつ自己制御しながら堆積されていく点が異なっています。
イオンビームエッチング・ミリングとは
イオンビームエッチング(不活性ガスを用いたミリング)とは、イオンビーム(荷電粒子)を対象物に照射し、マスキングによるパターン形成や凸部の平坦化を行う加工技術です。
スパッタリング→膜を付ける、エッチング→膜を削る